パニック障害や過敏性腸症候群のお薬には、治療効果があります。
ところがこうした精神疾患を持つ患者さんから、お薬があまり効かないとの訴えを聞くことがあります。
投薬処方は医療行為であり、このことの詳しい解説は医師でないとできません。
心理療法の経験則からは複雑性PTSDの治療が終結すると同時にパニック障害や過敏性腸症候群の症状が消えることがあります。
心理療法では、パニック障害には認知行動療法、過敏性腸症候群には催眠の腹部温感に治療効果が認められています。
複雑性PTSD
複雑性PTSDとは、幼い頃の心の傷が折り重なってできる精神疾患のことで、繰り返された虐待によりおもに思春期から成人になってから症状が現われます。虐待以外には、拷問、奴隷、大量虐殺などがあげられます。
精神疾患では、うつ病やパーソナリティー障害、解離性障害として現われる場合があり、愛着の問題とも関わりが深く、特に無秩序・無方向/未解決型との重なりが指摘されています。
複雑性PTSDの症状
侵入・再体験、回避、過覚醒、感情の調節困難、否定的自己概念、不安定な対人関係です。
侵入・再体験では、トラウマの記憶が恐怖心や無力感とともに、自分の意志とは無関係に悪夢として反復(フラッシュバック)されます。
回避では、できごとそのものを思い出したり考えたりすることを避けようとしたり、そのできごとに関係する人やもの、状況や会話を回避したりします。
過覚醒では、気持ちが張り詰め、ドキドキしたり、わずかな物音にひどく驚いたり、怒りっぽくなったりすることです。
感情の調節困難では、感情をありのままに感じたりコントロールしたりすることが難しいです。満足感や幸福感などの肯定的なものは感じにくく、反対に過去に負った恐怖や悲しみ、怒りや恥辱、否定的なものはいつまでも持ち続け、エスカレートした行動に発展する場合があります。ストレス下では感情の麻痺から何も感じられなくなったり、解離症状が生じる場合があります。
否定的自己概念では、自分や相手、世界に対する捉え方が現実的ではなく否定的でゆがんだものとなりがちです。ありのままに受け止めることが難しいため、ものごとがすんなり進まないと「自分が悪い」と思ったり、周りの人を「信頼できない」と考えたりしがちです。
不安定な対人関係では、感情調節と自己概念の問題から影響を受けます。対人関係そのものを回避したり、いつもイライラしたり、信頼できる相手でも怒りをぶつけてしまったりしがちです。今、ここでの問題なのに過去の人間関係を引きずることがあります。不安定な対人関係は、自己否定感から否定的感情、それが相手に向けられ悪循環が繰り返されます。
解離性障害 [解離症] 健忘、遁走、解離性同一性障害[解離性同一症]
自分が自分であるという意識や記憶、感覚などが一時的に失われた状態の疾患です。解離性健忘症、解離性遁走症、解離性同一症があります。
解離性健忘症では、自分にとって重要な記憶がすっぽり抜け落ちます。記憶に空白期間がみられます。長さは数分から数十年にも及ぶこともあり、全生活史健忘の場合もあります。
解離性遁走症は、過去の記憶の一部またはすべてを失い、家族や仕事を残してふだんの生活の場から姿を消し、遠く離れた場所に突然に移動してしまいます。
解離性同一症は、かつて多重人格障害と呼ばれ、一人の人間の中に全く別の人格が複数存在する疾患です。
愛着の問題
こちらの「精神疾患 こころの病気」ご参照ください。